心は山の如し
塩尻市にある高野山真言宗郷福寺。
このお寺で行われた不動尊勧請140周年記念大祭において
白馬住職が八千枚護摩供の大行を厳修されました。
22日間に渡る行は、辺りが暗く寝静まっている時刻から始まり、
一日のほとんどを護摩行に費やし、不動明王を拝み続けました。
食事は精進を厳守し、最後は断食となり、身に余計なものは
残っていない状態にして身を清めていきます。
11月2日、その結願となる八千枚護摩供に早朝より御祈祷の役僧として
出仕させていただきました。
白馬住職が一生に一度と決心して臨んだこの行は真言宗随一の祈祷であり、
成満を迎えるその時まで、一日お供できたことを光栄に思います。
大変多く方が不動堂に参拝に見えました。
行われた御祈祷の数は、この一日のみで20座を超え、
護摩の炎の傍で行者のお世話をする承仕、読経と太鼓の役僧はじめ、
堂外での受付誘導、各所設営、食事の準備配膳、記録撮影など、
多くの方々がこの行を助けていることを知り、覚悟をもって大願を背負った
白馬住職を協力一致で助ける、まさに大行とはこのことと感じました。
わたしが目にして感激したのは、身に着けておられる白装束の袈裟が、
檀信徒や有志の方がつどい、祈りを込めて縫いあげたものだということです。
それを纏う白馬住職は、皆さんのご慈悲に支えられるようにこの日を迎えたのです。
真福寺からも参拝希望者をつどい、20名で最終座を参拝いたしました。
実は直前に焼八千枚は完遂しており、最後の御祈祷にすでに護摩の炎はなくとも、
目の前に見る、白馬住職の大願成就に尽くした安堵の背中が印象的でした。
真福寺からおまいりした皆さんは、行を成し終え、いよいよお堂を出る
白馬住職に出会え、その姿を拝して感激されたようです。
白馬住職は、この行は一人ではできない、二十二日の間には、
お堂におまいりに来てくださる方がいて、顔を見に来てくださる方がいて、
物音のない夜明け前の行は、背後に人が(御霊)立つことを感じ、
本当に多くのみなさんのおかげがあったと、最後に述べておられました。
焼八千枚護摩供。
焚くことの数8,000本。いかに人の煩悩や迷いが多く、無尽であるか。
それでも行者が離れることなくその炎と向き合い、拝み続ける不動の姿勢は、
人の願う心がいかに清浄であるかを仏様にお伝えするものであります。
この行の祈りは行者ひとりのものではなかった。
人々のために身を粉にして拝み続け、守るべきものがある。
そんな人の姿は優しく、心は山の如し、お不動様のように堅固なのでしょう。
合掌








