東京盆にて
今年も東京大田区にあるお寺のお盆棚経のお手伝いをしてまいりました。
最初お世話になったのが平成15年。8年空き平成24年より再びお世話になっております。
3年続けて棚経に参ると地図が頭に入り、今年はそう迷うこともなくスムーズに進むことができました。
自転車で走りながら目に映るその下町風景も、いつしか馴染みさえ感じております。
このお寺さんの檀家さまとは、年に一度、この東京盆でお会いするのみですが、少しずつでもお名前とお顔を覚えてきたように思います。
お檀家さまも「諏訪から来てるんだよね」って覚えて声をかけて下さる方がいます。
一件一件ご自宅にお参りして拝み、たとえ1分でも顔を合わせて言葉を交わす、その積み重ねから生まれる互いの安心ある距離感というのは、棚経を行ってこそ解るものでした。
毎年のこととはいえ、いつお坊さんが来るのかはっきりせぬとも家を空けず待っていて下さり、やがてなんの前置きもなくチャイムを鳴らす私どもを快く家にあげて下さります。読経中は私どもの後ろに座り、ともに静かにご供養をされているのが伝わります。読経を終えると暑さを気遣い、前もって冷やしたおしぼりと冷たいお茶を出して下さいます。
大変暑く、湿度も高い東京の夏。家にあがり読経を唱えると、どっと汗が流れてきます。するとそれを察したかのようにうしろから心地よい風が背や首にあたります。なんとも癒されるこの風の良い加減なこと。
うしろからうちわで扇いでくださっているんですね。
この風景は、そのお宅では昔からのご先祖さまより見てきたことなのでしょう。そして今また、小さなこどもがその様子を見ているのです。
この背中にあたる風は、このご家族に昔から静かに伝わる優しさ、布施のかたちなのかもしれません。
本当にありがたいことです。
家庭のなかの仏事。これが絶えず「継承」されていくこと、これから先大切に考えていかなくてはなりません。
一件一件のご自宅に参る棚経でこそ感じたことです。
合掌