和に還る
境内にはキンモクセイの甘い香りが広がっています。
このたびお寺で観月会が行われました。
秋の七草、月見団子とお抹茶、秋の恵みがお供えされ、
見上げれば月もはっきりと観ることのできた十五夜の空。
客殿の和室では香が焚かれ、琴が響くなか、
お抹茶と美味しい茶菓子をいただきながらくつろぎました。
満月の明かりを静かに眺めながら心安らぐひとときとなりました。
お寺にこのような素敵な設えをしてくださり、美しい琴の音をもてなし、
そして茶道に親しまれ、お心のこもった茶の接待をしてくださった皆様、
誠にありがとうございました。
日本人にとって「和」に通ずる風習、創作や思考は特別。
多様化した日本の生活は和の環境から遠ざかっている面が大いにありますが、
それでも時折和を求め、和に還り、和の価値に触れ喜ぶことがあるように思います。
日常に「刺激」が必要なように、同じ分だけ「静寂」を求めることがあります。
人は潜在的に「洗心」を求めているのではないでしょうか。
雲に隠れる満月のように。
畳を素足に感じる感触、畳に腰を下ろす感触、色や匂い、
そこからもたらされる緊張と安心感の双方を私は大切に感じています。
一方で、お年寄りが増えていくなか利便性、快適性が必須であることも承知しています。
誰も丈夫で居続けられるわけはなく、いずれは人に頼る身体になるのですから。
現在は多くが椅子席に様変わりし、若者にも当然のように椅子が整い、
畳の良さに触れる機会から遠ざかっていくことは少々寂しくもあります。
お寺では、求める人が還れる、そんな場所を残しておきたいと思います。
合掌