春雪~五大の響き~
立春を過ぎて、射し込む陽が濃くなってきたこの頃。
いよいよ暖かな春が近いことを肌に感じていた矢先、
2月10日は、一転大雪となりました。
一日中、夜中まで容赦なく降り続いた春の雪は大変重たく、
8度も繰り返した境内と駐車場の雪掻きは身に応えました。
道路の雪掻きをして下さる、近所のご家族。
雪掻きの最中、突然、喜びの声をあげたのです。
私はすぐに察しました。受験の合格。
強く降る雪のなかに見た歓喜の光景は、体の疲れを癒し、心を灯してくれました。
翌日のお寺でのご法事などに向け、駐車スペースを確保しておくべく続けた
駐車場の雪掻きは、人手も足りず、もっとも体力を消耗し難儀しておりました。
昼前にその様子を見た仲間が重機で助けてくれました。
夜になると、再び救いの手を差し伸べてくれました。
次の日に駐車場を不備なく利用していただけることに安堵し、
感謝で胸いっぱいになりました。
「ありがとう。」
夜9時には雪が止み、境内の雪掻きがやっとひと段落。
一日中、遠くからサイレンが聞こえていたように思います。
朝、目が覚め、4時30分に外に出ると、真っ暗な空のもとには一面の銀世界。
一夜明けようとしている辺りの様子を窺うと、そこはしんと静まり返っていました。
風もなく、時間も生命の営みも皆止まってしまったかのように静か。
神々しささえ感じました。
厚く積もった雪がすべてを吸収しているのでしょうか。
世間の喧騒も人々の迷いも、すべてを吸収しているかのように思えた、
包容力に満ちた神と仏の世界でした。
朝のお勤めを終えて、今一度雪掻きをし終えた頃、
鳥の声が聞こえてきました。それはいつもと違う、どこか遠いところから
聞こえたように感じました。
弘法大師は「五大に響きあり」と仰いました。
森羅万象、すべての生命に仏の声を聞くことができると。
苦難、逆風に菩薩ありと感じた、このたびの春雪でした。
辺りの雪が溶けた頃、今年もふきのとうを採りに行こう。
合掌