赤く染まる
秋深まり、11月に入りましたが、暖かい日が続いています。
法事に来られた方と話します。
「こんな調子で年まで越せたら、どんなにいいことかねえ。」
そんなことはまず有り得ないと、わかっている者同士の会話ですね。
境内の木々は毎日葉を大量に落とし、枝が露出したその姿に、
冬が近いことを知らされます。
白い息を吐く朝が、もうすぐやってきます。
今朝、鐘を撞いたあと東の尾根を見ると、やけに赤く、それは火を連想させました。
しかし、すぐにそうではないと気づき、しばらくすると空が赤く染まり始めました。
軽トラに乗り、寺平へ向かい走っていると、空が燃えるように赤く広がり、
私は見晴らしのよい場所でその空を観たくて、スピードを上げました。
途中、天龍大明神を通った時、真っ赤に染まる明神池に驚き、
車を止めて撮影しました。
目に映った姿を、古いスマホではありのまま捉えることが出来ませんでしたが、
その美しい情景に、心奪われておりました。
まもなくその色は褪せていき、燃えるような空は幻となりました。
自然界は、時々驚くほどの美しさを人に魅せてくれることがあります。
それはほんのわずかな時間であることが多く、奇跡的に出会えた時は、
神々しささえ感じます。
しかし、いつもわかるのです。それは幻であると。
世は無常であるがゆえに、儚くもあります。
儚いがゆえに美しいとも言えるのでしょう。
人ひとりの命も有限であり、必ず散る時がやってきます。
常に変化し続けているその姿や心が、真っ赤に燃えるような
エネルギーを放つ時はいつなのでしょうか。
人には、そのような時がきっとあると思います。
そのようなご縁にふれる時が必ず巡ってきます。
風もなく静かな水面が、朝陽に燃える空をありのままに映したように。
合掌