無常の風にさらわれて
「今月18日の観音縁日のお護摩は、時間を変更し、
午後2時からといたします。」
毎月ご縁日の護摩行にお越しになる方々に、
電話やLINEでお伝えしました。
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お檀徒様のご葬儀の報が入り、詳しく知ると、
お亡くなりになったのは、毎月熱心に護摩行をお参りされる、
とてもお世話になっている方でした。
お元気な方なので、すぐにその事実を受けとめることができませんでした。
毎月のお護摩の他にもお寺の行事には、常に関心をもって下さり、
昨年、京都本山智積院に団体参拝できたのも、
この方の一言が始まりだったのです。
「おい、副住、みんなで智積院に行くじゃあねえか!!」
この声に強く背中を押してもらえたことを、はっきりと記憶しています。
おしゃべりが好きで、加えて声も大きい。(お腹も大きかった)
心の声が常に漏れてしまっているような人で、京都旅行の道中、バスの中もそう、
お護摩の最中も後ろでしゃべっているのはこの方。
いつもこの方のお姿には励まされていました。
1月18日のお護摩にはめずらしくお姿がなかったのです。
先月のお護摩の際にはお姿があり、安心。
「おい、先月悪かったねえ!」
とおっしゃるので、
私は、お姿がないのでいくらか心配してましたよと言ったら、
「ま~たあ~!」
という、いかにもこの方らしいお返事が。
これが、この方との最後の会話となりました。
お亡くなりになったのは、3月6日のまだ夜の明けない3時頃のようです。
それを知らず、お護摩の時間変更をLINEで伝えたのは、その日の朝。
携帯を確認すると、それが既読になっていないことに気づきました。
3月7日の朝、
ご自宅で眠るお姿にご挨拶に伺いました。
奥様には御礼と私の思い出をお話しました。
お顔を拝ませていただくと、とても綺麗なお顔に驚きました。
そして、そのお顔は笑っていらっしゃる。
いかにも、この方らしい。
護摩の日に一緒に唱えていた観音経を、眠るお傍で唱えさせていただきました。
近頃お体に不調を感じることがあり、布団に伏せていることが多かったそうです。
お亡くなりになる前は、やはりしんどそうにしておられたとのこと。
我が身に何かを察したのであれば、不安のなかに大切な人を想い、そして願い、
毎月通った観音菩薩を心に浮かべていたに違いない。
最後に枕元で、これまでの御礼を伝えさせていただきました。
そして願いも込めて、もう一言だけ。
「3月18日のお護摩は、午後2時からです。観音堂にお越し下さいね。」
無常の風にさらわれて、大切な人が去っていくのが寂しい。
ありがとうございました。
「おう来たか、副住。」
綺麗なお顔をして眠っていたなぁ。お疲れ様でした。
合掌