ほとけさまにふれる
異常なほど暑かった夏も終わりを迎えています。
残暑厳しい毎日、朝から蝉が騒がしく鳴いています。
まだ夏は終わらないぞ、と叫んでいるかのようです。
見上げると、鳥が蝉を捕えようと必死に逃げる蝉を追いかけています。
まるで強制的に夏を終わらせようとしているかのようです。
自然界の営みは「完璧」、真理そのものとも言われますが、
その大いなる営みのなかに、自然の一部である生き物たち、人間も含めて
「不完全」な者たちが今日も本能を働かせています。
煩悩の世界から自然界を眺め、その美しさに何度心洗われたことでしょう。
8月21日、毎月恒例の写経体験会が行われ、皆さん、お暑いなか
熱心に足をお運びいただき、般若心経の写経を心静かに勤めました。
真福寺での写経会で大切にお伝えしていること。
丁寧にすすめていくことはもちろんですが、完璧な写経、
美しい文字がゴールではありません。
写経は心の鏡。
移りゆく心が文字に映ります。
筆をとりながら、自分の揺れる心とも向き合うことが大切。
心揺れることなく書き進められたのなら、それは喜びや自信ともなりましょう。
どちらも写経の醍醐味といえます。
今日の写経と明日の写経はまた違うわけで、この時間と道のりが味わい深いのです。
金子みすずさんの詩を紹介します。
わたしがさびしいときに よその人は知らないの
わたしがさびしいときに お友だちはわらうの
わたしがさびしいときに お母さんはやさしいの
わたしがさびしいときに ほとけさまはさびしいの
共感するほとけさまが表されています。
気持ちに寄り添ってくださるほとけさまの慈悲深さ。
これは写経の功徳と似ています。
経文が自分を受け止めてくださる。
写経の道のりにおいて、経文を目で追い、指で触れる行いそのものが自分を支え、
安心や励みにつながるのです。
写経を通じて、皆それぞれの思いでほとけさまにふれる。
真福寺の写経はそれを伝えたくて開かれ、皆さまから大切に奉納されています。
晴れの日は晴れなりに。
雨雪の日もそれなりに。
来月の写経は蝉の声を聞くこともないでしょう。
合掌
写経体験会は毎月21日(弘法大師ご縁日)朝9時より
奉納料:500円