辛抱強く
12月8日、お釈迦様が深い瞑想から目覚め成道された日。
朝、境内にはうっすらと雪が敷いていました。夜のうちに雪が降ったのですね。
いよいよ本格的な冬の寒さを迎えようとするなか、山門の松の根本には、
いまも黄色い花が咲いています。
お檀家様からいただいたツワブキ。漢字で石蕗と書きます。
こんなに長い間咲くものかと驚いています。
秋の終わり、辺りの花はすべて散ってゆき、木々の葉は落ち、
風の冷たさを感じるようになった頃に、この花は咲いてくれます。
とても丈夫な花で、潮風が吹き付ける海岸の岩の間などに自生します。
その花言葉は、困難に負けない。
辛抱強い印象をもつ花だからでしょう。
春の花が散りゆく姿に儚さをおぼえ、その美しさに魅了される一方、
冬の寒さに耐え、その年最後の花として凛と咲き続けているツワブキには、
人が元気づけられている、そんな気がしております。
山門のすぐそばに、可愛らしくあたたかな黄色。
そう、小さな太陽がそこにあるように。
ツワブキは毒性があり、繁殖力が強いとされています。
毒性には身を守る力、繁殖力には意志の強さ、と例えましょうか。
各地で困難な生活を余儀なくされている方々が大勢いらっしゃいます。
体に堪える冬を越さなくてはなりません。
仏性宿るとされる小さな花に手をあわせて祈ります。
暖かな太陽が住まいを照らし、その方々の背中を温めてほしいと。
元旦に起きた大地震から一年。
ただただ穏やかな年明けを願っています。
みなさんが近くのあたたかな花、人々の心に勇気づけられますように。
花なくして、鳥の声なくして、お釈迦様の深い瞑想はなかったのでしょう。
合掌