私のなかの六道
朝、川岸の高尾霊園をおまいりした際、まさにいま登ってくる日が
六地蔵を照らし、地蔵尊のお顔が温かみを帯びていました。
抜苦与楽。六道にいる者の苦しみを除いてくださるお地蔵様たち。
そのお優しいご尊顔を拝した瞬間でした。
今年は戦後から80年目を数える年。
戦争の苦しみ、悲しみ、叫びを身をもって体験した方の多くはすでに鬼籍に
入っておられ、いまなお自らの声で語り継がれる方は希少です。
「戦後」という言葉の重みを理解できていない私がここに生きています。
言葉の意味を考えることなく日を送っているのですから、先立たれた人たちが
生きたかったはずの平和のなかにいるのでしょう。
さて、私たちが無始より生き死にを繰り返し行き着いているとされる六道。
地獄、餓鬼、畜生、修羅、人、天の「六道」はどこにあるのでしょう。
私が生まれる前のことも死んだ後のことも、いまは「知ることのできない」領域です。
しかしそれは、遥か遠く別世界のことのみを示しているものでしょうか。
実は私たちにごく近いところに存在しているのではないですか。
戦争を体験された方の目に焼き付き、語られた世界とはまさにこのことだと思うのです。
六道は、私たちの内側にこそ存在し、その実世界は私たち自身が創り出している。
世の平和は外側に求めるばかりではなく、一人ひとりがその「種」であり、
芽を出すに至る「縁」でもあるという自覚が大切なのでしょう。
4月8日はお釈迦さまがご生誕になられた日です。
お釈迦さまは命の尊さを生涯説き続けました。
「人身受け難し」という、人として生まれたことの尊さを表す言葉がございます。
なぜ尊いのか。ほとけの声を聞ける命であり、ほとけに成れる命でもあるからです。
「平和な世は人が築く、と同時に、それを破壊するのもまた人である」ことを
憂いておられたからこそ、出会う人には苦しみを抜き、よく生きる力を与え、
抜苦与楽布教の旅のなかで、命の尊さを説き続けて下さったのですね。
今月20日(日)にお釈迦さまを讃える花まつりコンサートを開催します。
高野山真言宗と真言宗智山派の青年僧による仏教音楽声明と、
御諏訪太鼓伝承者である山本麻琴氏による共演です。
日頃、仕事上で山本氏とご一緒することはもちろんございませんが、
仏教界においても同じ真言宗でも、高野山と智山ではともに勤める機会は
ほとんどないのです。なので、とても稀有な機会と捉えて下さると嬉しいです。
高野山真言宗有志の声明グループ六大(ろくだい)。
同じく真言宗智山派から谷響(こっきょう)。
山本麻琴さんとともに三度目の三者共演となりますが、コンサートプログラムを組み、
大体的に皆さんをお迎えするのは、今回が初めてのこととなります。
「六大の響き~恒久平和の祈り~」
私たちの残せるメッセージを、無二の表現をもって精一杯に演出します。
どうぞお誘いあわせてご来場いただき、お釈迦さまには甘茶をかけて
家族の健康を祈りつつ穏やかにおまいりなさって下さい。
開場17時、開演17時30分。
入場は投げ銭でお気持ちをお願い申し上げます。
19時終了後はライトアップされた夜桜をお楽しみ下さい。
この会場に集まった人がともに情熱と感動を共感し心潤わせ、
平和の芽が出るご縁のひとときにしたいと考えています。
では、当山の本堂でお会いしましょう。
合掌